【活動報告】NPOの財務分析の活用に向けて~立教大学でゲスト講義『NPOの決算書分析入門』
立教大学でゲスト講師「NPOの決算書分析入門」を務めました
少し前の話になりますが、さる2019年7月2日、立教大学コミュニティ福祉学部の藤井敦史先生・原田晃樹先生のお招きにより、「NPOの決算書分析入門」というタイトルで、両先生のゼミ(合同授業)のゲスト講師を務めてきました。
当日は、「初歩の初歩からお願いしたい」という両先生のご要望に沿い、以下の順番でお話しました。
1.決算書とは何か? 2.決算書ができるまで 3.企業における代表的な財務指標 4.NPO法人会計基準による決算書の構造 5.NPO法人会計基準に基づく財務指標例 6.(ミニワーク)NPO法人の決算書を見てみよう |
受講した学生さんは決算書どころか仕訳そのものが初めてという人が多く、いかに初歩の初歩から説き起こしたつもりでも、わかりやすい講義にはならなかったのではないかと思います。
それでもミニワーク(公開されているあるNPO法人の決算書を使いました)では、受講生の方々が目を輝かせて電卓を叩き、指標を算出しようとしていたのが印象的でした。
NPO支援の実務にも財務分析はもっと応用できそう
財務分析といえば、企業の決算書を分析して、主に財務面のコンサルティング(金融機関取引、事業再生、事業承継・M&A等)に用いるイメージがあります、しかし、今回の経験を通じ、NPO支援の実務(あるいはNPO自身の分析)においても、例えば
・各NPOの財務状況に応じたファンドレイジング戦略を立案する
・インパクト評価における指標として財務指標を使う
など、財務分析は応用の可能性が大きいと実感しました。
NPO法人会計基準の特徴と先行研究を反映させた精緻な財務分析をめざしたい
今回の講義の成果を今後の実務に活用する上では、2つ課題があると思います。
(1)NPO法人会計基準の良さを生かした財務指標の開発
私は今回の講義で、NPO法人の特徴を生かした財務指標として、以下を提起してみました。
経常収益における費目別割合 | 経常収益における費目別(受取寄付金、受取会費等)の割合をみる。 |
事業別正味財産増減比率 | 事業正味財産増減比率を、事業別に算出して、事業ごとの収益性を比較する。 |
市民サポート比率(仮) | NPO法人の基盤を支える経費である管理費を、市民のサポートでどの程度賄っているかをみる。 市民サポート比率=(受取寄付金+受取会費)÷管理費×100(%) |
これらはあくまで問題提起の域を出ませんが、せっかくNPO法人会計基準が、
- ・経常収益が、「受取会費」「受取寄付金」「受取助成金等」「事業収益」「その他収益」に分かれていること
- ・現物寄付やボランティアの受け入れ等を反映できるようになっている
など、NPO法人の活動実態に即したつくりになっているのですから、財務指標もこうした特長を生かしたものを開発したいと思いました。
(2)(個人の課題として)先行研究と現場情報の反映等による高度化
一方、今回心残りがあるとすれば、インターネット等でNPOの財務分析に関する先行研究を事前に調べたものの、調査が行き届かず、先行研究の成果を十分反映することがかなわなかったことです。
今後は先行研究をいっそうよく学び、またNPO支援の現場情報を踏まえながら、NPOの財務分析と、分析結果活用によるNPO支援ノウハウを高めていければと思います。