休眠預金法成立後の3つの課題
休眠預金法成立イベント(2月2日)のポイント
さる2月2日、衆議院第一議員会館で、「休眠預金法成立イベント-おめでとう休眠預金、そしてこれからどうなる!?-」が開催されたので、参加してきました。
内容から考えてセミナーみたいかと思ったら、中央には料理が飾り付けられ、脇にはビールやウイスキー、スパークリングワインなどのドリンクが並び、すっかり立食パーティな風情でしたが、休眠預金法成立後に向けて、いくつか重要なポイントが見えましたので、参考資料も含め、以下にまとめておきます。
・休眠預金による、民間公益活動に助成・貸付け・出資を行う「資金分配団体」 (助成財団、コミュニティ財団、市民ファンド、NPOバンク等を想定)に対する助成、貸付け関係業務開始は、2019年秋をめどとしている。
・そのため、休眠預金活用に向けた審議会につき、2017年春開始に向け準備が進んでいる。審議会で1年かけて基本方針を決め、中期的方針、休眠預金等交付金の受け皿となる「指定活用団体」 の基準などを決め、指定活用団体を選定する。2019年春には指定活用団体を指定し、毎年の基本計画を決め、2019年の秋に交付ができるように準備を進めている。
(以上につき、下記資料参照:休眠預金活用推進議員連盟のサイトより)
休眠預金活用に係る法律成立後のスケジュール(イメージ)
・内閣府は、指定活用団体・資金分配団体になることに関心のある団体向けの休眠預金法説明会を開催予定(大阪=2月27日、東京=3月13日)。
(本件につき、下記内閣府Webサイト参照)
「団体等の皆さまへの法律説明会」の開催について
・休眠口座国民会議は解散し、後継組織として「休眠預金『未来構想』プラットフォームを立ち上げ、広範に議論を進めるとともに、当プラットフォームでの議論が、指定活用団体の苗床になることを想定している(画像参照)。
自分ごととして考える休眠預金法成立後の課題
この間の休眠預金法を巡る議論や、今回のイベント参加を踏まえ、ソーシャルファイナンスに携わる立場として、取り組むべき課題が3つあると考えました。この点については、皆さんのご意見もうかがいつつ、私自身も自分ごととしてしっかり取り組んでいきたいと考えています。
1.生活困窮者等に直接資金が貸し付けられる仕組みを導入したい
現状では、休眠預金の資金の使途は「民間公益活動」とされていますが、休眠預金の資金の3つの活用分野の一つである「②日常生活等を営む上で困難を有する者の支援」に、家計相談等を併用した貸付けが有効であることは、生協やNPO、労働金庫等による貸付けの実績からも、また生活困窮者自立支援法の「家計相談支援事業」に貸付けが組み込まれていることでも明白だと思います。
また、もう一つの使途である「子ども及び若者の支援」においても、例えば無利子奨学金の拡充など、当事者に直接資金を貸付けることのメリットは大きいと考えます。この点では、受益者である生活困窮者等の生活を改善状況等について、社会的インパクト評価が必要になり、その負担が重くなることが懸念されますが、サンプリング調査や資金分配団体への聞き取りなどで、評価を効率的に行う工夫もできそうです。
2.市民セクターの総意で、最善の資金活用の枠組みを作りたい
休眠預金活用に向けた審議会が春から始まり、休眠預金『未来構想』プラットフォームも立ち上がります。
これらの議論において、市民の受け手である市民セクターにとって使いよく、一方で社会全体から見て納得度の高い制度にしないと、休眠預金活用自体がとん挫することになりかねません。
この点私自身は、休眠預金による資金供給のうち、目が向きにくい「貸付・出資」を円滑に行うための制度づくりについて、さまざまな機会を活用して発言していこうと考えています。
3.資金分配団体の層を分厚くしたい
休眠預金による「貸付・出資」の担い手としては、NPOバンクや市民ファンドが想定されています。しかし両者とも団体数が少なく、全国の現場の団体が手軽にアクセスするには心もとない状況です。ソーシャルビジネスへの貸付けについてはこの数年、政府系金融機関や一部信用金庫等が力を入れており、NPO法人への信用保証制度も整備されましたが、現場に密着したNPOバンクや市民ファンドは、ソーシャルビジネスへの貸付けに熱心な金融機関にとっても、良きパートナーになるはずです。
そうした展望を持ちつつ、将来の資金分配団体となりうるNPOバンクや市民ファンドの層を厚くすることについて、自分自身の仕事として取り組みたいと考えています。
さらに、NPOバンクや市民ファンドの新規創業を困難にしている金融制度の壁(この点は、稿を改めます)を低くする制度的手当も必要です。この点の制度改善にも力を入れていこうと思います。