会社法改正における株主提案権制限で、株主運動が危ない?
株主提案権制限の動き?
さる2月10日付の日本経済新聞1面(朝刊=東京本社14版)で、「株主提案権 乱用防ぐ」という見出しで、以下の通り報道されました。
「法務省は株主総会で株主側から議案を提起する『株主提案権』の乱用的行使を防止するため、新たな措置の具体的な検討に入った。」
法務省・法制審議会のWebサイトを見ると、確かに2月9日の法制審議会総会第178回総会資料(下記URL参照)
http://www.moj.go.jp/content/001216452.pdf
で、
「株主総会に関する手続の合理化」
が掲げられています(これが株主提案権制限の制限そのものかは明確ではありませんが)。
そして、本件については、法制審議会総会第178回総会議事概要によれば、
「『会社法制(企業統治等関係)部会』(新設)に付託して審議することとし,部会から報告を受けた後,改めて総会において審議することとされた。」
とあります。(下記URL参照)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500028.html
気になるのは、日本経済新聞の上記記事で、株主提案権の乱用の事例と思われるものとして、以下の例が記載されていたことです。
「関西電力では16年に原子力発電所の廃炉や社会的責任(CSR)強化などの議案が22件提案された。」
このようなものが例示されているということは、市民による株主運動が、株主提案権の乱用として、規制のターゲットとされているようにも見えます。
これは見過ごせません。
株主運動の意義とこれから
そもそも、株主としての立場を活用して、企業に社会的責任を果たすよう働きかける株主運動は、企業活動が社会課題に及ぼす影響やCSRに対する市民の声を届け、ステークホルダーのひとつである市民と企業の対話を促す意味で、社会的に重要なものだと私は考えます。
日本の株主運動としては、脱原発を目指す市民による電力会社に対する取り組みが知られているところです。
企業にとっても、市民との対話が進むことは、CSRを果たし、事業面でのリスク回避にも寄与する点で、企業価値向上につながる側面があると思います。
ところが、今回の新しい規制で株主運動が息の根を止められてしまうとすれば、市民にとっては企業と対話する機会が損なわれかねません。
企業にとっても、市民との対話に背を向けることは、短期的には負担の軽減になったとしても、リスクに気づく機会を失い、社会からの信頼を損なうことで、企業価値の低下につながるとも考えられます。
もっとも、私自身、現状では株主運動の状況や、株主運動の法的意義などについて、調査できているわけではありません。
上記の「22件」についても、具体的にどのようなものか、見ていく必要はあります。
よって、現状では危惧感の表明でしかないのですが、この問題は市民と企業の関係に大きな影響を及ぼし、特に株主運動にとっては生死にかかわる可能性もあるだけに、より深く考えていく必要があると思い、ブログ記事とさせていただきました。